米沢嘉博氏逝去2006/10/02 21:51

朝刊を読んでビックリしました。
漫画評論家かつコミケ元代表の米沢嘉博氏が逝去されました。

この方を最初に知ったのは漫画評論家としてでした。
この方がいなかったら,コンテンツ大国なんて言っていられる状況もなかったかもしれなかった訳でして,新聞も関係者の弔辞を取って小特集組むぐらいはせにゃいかんです。
NHKは朝のニュースはひたすらディープインパクトですし。

ご冥福をお祈り申し上げます。
合掌。

この見出しはなんとかならなかったのでしょうか2006/08/25 03:33

"ニートに「発達障害」の疑い、支援に心理専門職も"(YOMIURI ONLINE)
という記事があるのですが,この見出しは悪すぎです。

これでは「ニートの原因が発達障碍である」という記事だと思ってしまいます。

しかし,中の記事は

ニートとして就職・自立支援施設の利用者している人を調査したところ

この結果、医師から発達障害との診断を受けている2人を含む計36人、23・2%に、発達障害またはその疑いがあることがわかった。

(略)

 ニートの就労支援では、一般的に、規則正しい生活を送る訓練や、企業での就労体験、資格取得の勉強などが行われている。

 一方、発達障害がある場合は、作業訓練のほか、援助者の確保や同僚の理解促進など、働く場の環境整備が中心となる。具体的には、福祉機関などと連携して個別の支援計画を作ったり、企業を啓発したりすることが求められている。

"ニートに「発達障害」の疑い、支援に心理専門職も"(YOMIURI ONLINE)

  • ニートとして支援を受けている人の中には「発達障碍」またはその疑いの人がいる
  • それぞれで支援策が異なる

という意味合いのものです。

この記事がYahooニュースに載っているのですが,こちらは困ったことにこの結果、医師から発達障害との診断を受けている2人を含む計36人、23・2%に、発達障害またはその疑いがあることがわかった。で切れてしまって,読売新聞の後段にあった「発達障碍」に関する解説がなくなってしまいますので,見出しに近い記事になってしまっています。

確かに「ニート対策」としてみると読売の記事は,違う方向に誘導するものと見えるかもしれませんが,一緒くたになってしまっている「発達障碍」の人への対策としてみると,きちんと書かれたものです。

これが政策として良いかはまた別の問題ですが。

どうか,「ニート対策」の視点の人も,「障害者扱い」といった言葉が「障碍者」への侮蔑となるということはお含みおき下さい。

ちなみにこの調査は記事中に

 厚労省によると、発達障害のある人は、集団で行動するニート支援施設を利用しない傾向がある。このため、「支援施設に来ない人を含めると、割合がさらに高くなる可能性もある」(障害者雇用対策課)という。

"ニートに「発達障害」の疑い、支援に心理専門職も"(YOMIURI ONLINE)

とありますので,「厚生労働省 障害者雇用対策課」の調査ではないかと思います。

科学と厳密さとお菓子の話2006/03/03 00:54

経済学は科学かという一連のやり取りを見ていて学生時代を思い出しました。

一連のやり取り

私は化学を学んだのですが,分析化学ってものをやると有効数値はコンマ8桁と仕込まれてそれが標準の考え方になってしまったりします。

で,私は臨床検査というちょっと変わったコースに進みまして生物学科と解剖の合同実習がありました。

そして,実習前に5%の生理食塩水を100cm3作ってくださいと言われたときに,化学科は一斉にノートを取り出してがりがりと計算を始めたのに対して生物学科はいきなり水100cm3に塩5gをいれるような暴挙(笑)をやるんですね。

こんなのは高校生のレベルだぞと(笑)。

(重量%ですので,水1003に対して5gをいれると

 5/(100+5)=0.0476

で4.76%の生理食塩水になってしまいます)。

お互い相手の行動にびっくりして顔を見合わせるということがありました。

勿論,解剖に使う生食は,大雑把に作ってもなんの問題もありませんでした。

一方で,私はお菓子作りを趣味のひとつとしております。

で,そういう教育を受けていると考え方が変わってきて

    材料

 小麦粉  100g (あらかじめふるっておく)

とあったりすると,はて?この100gはふるう前のものかふるった後のものなのだろうかと考えだしちゃうんですね。

使用量が100gだからふるったあとのものだよなぁと苦労してふるった後の小麦粉を図ったりしたものです。

勿論,どちらでも問題ありません^^。

(塩小さじ1/3というのも困りものでした^^;)。

ま,結局のところ,武器はどう使うかが問題で,いい武器を持っているという自慢は対して役に立たないし,槍がいいか刀がいいかは状況によります,ということではないかと思います。


おまけ(科学に対する認識の例)

お菓子「こつ」の科学

河田昌子著,柴田書店

菓子作りは根本的に科学の領域。ある技術水準に達すれば、そこからはカン、才能のきらめきなどが結果を左右しますが、科学知識の裏打ちがなければ、無用な寄り道をさせられたり、迷路に踏み込んだり……。

柴田書店オンラインショップ: お菓子「こつ」の科学

本書はお菓子作りのコツについて,なぜそれを行うのか(例,カスタードを作るときになぜ卵と砂糖をよくすり混ぜるのか)を素材の特性などを紹介しながら解説した本です。

お菓子を作るときの手順やどれくらいの時間でこなさなければいけないか,どう手が抜けるかを考えるときなど参考になります。

小林信彦氏のハイパーインフレ論の源泉を探る2006/02/20 02:48

この文章は

小林信彦のハイパーインフレ論|Economics Lovers Live
http://reflation.bblog.jp/entry/274583/

に関連して,ハイパーインフレ論がどこから来ているのかを中心に考えて小林信彦氏の著作をいくつか読んでみたまとめです。

(私は小林信彦氏の著作は出れば買うという愛読者です。)

チェックしたのはすぐ読めた(埋もれている本の中から見つかった^^;)以下の3冊です。

     
  • 『花と爆弾 人生は五十一から』(文藝春秋,2004)
  •  
  • 『定年なし、打つ手なし』(朝日新聞社,2004)
  •  
  • 『本音を申せば』(文藝春秋,2005)

全体の印象としては,

ある村で原因不明の病気が流行っていた。

村にやって来た調査団は湖の片隅の祠から放射線が出ているのを発見した。

「壊して調査してみるべきだ。祠の中を調べれば病気は止められる。」

すると村の古老が

「科学だがなんだかしんねぇが,あの祠は壊しちゃなんね。恐ろしいことさ起きる。すぐに都会さけえっちまうのに,何言うか。神様さ怒ったら学者さ何ができる。おめたちわけもんは,昔さしらん。30年めぇにも,おらがちいーさいときにも恐ろしことさ起きた。。」

という感じです。

特撮映画・怪奇映画・諸星大二郎ですと,壊してしまったがために何かが起きてしまうのですが(笑)。

この3冊の中には,誰かの説に依拠してハイパーインフレになると述べた文章はありませんでした。

景気に関する文章に繰り返し現れるモチーフは不安感であり,それは『定年なし、打つ手なし』のあとがきで述べられているものとほぼ同じものです

ぼくが会社を(今風に言えば)リストラされて、やむなく、というか、強引に、自営業に入ったプロセス、中年の不安、インフレへの恐怖、老年に入る時のとまどい―それらを大げさにならないように書いたのが、この本の第I部である。

『定年なし、打つ手なし』あとがき(P.263),(小林 信彦,朝日新聞社)

では,小林信彦氏のインフレに対する感覚、反インフレ(目標)はどのようなものでしょうか

まず,前提条件として高いインフレになり自分の生活が脅かされることへの不安(恐怖)があります。

その他,戦争体験からくる責任と取らないもの(国,マスコミ,教師)への不信感があります(根拠レスですが,学者もそこに入ってくるのではないかと思われます)。

そこへ学者(責任を取らないもの)がインフレを起こせと提案しているという情報が入ってきて,「そんな事はトンデモない」ということになったのではないでしょうか。

[情報の入手先]

情報の入手先としては,ある程度信頼の置いているものとして以下のようなものがあげられています。

  • 週刊誌・夕刊紙(大手マスメディアは信頼していない)
  • ラジオ(主にTBSラジオの『アクセス』(関連ありそうな人物として田中康夫氏,宮崎哲弥氏,金子勝氏(ゲスト))『伊集院光 日曜日の秘密基地』)

[ハイパーインフレ]

さて,インフレを起こせばハイパーインフレになるという言説ですが,これが誰かの説によるのであれば,これまでの小林氏の書き方からして,出典を書くでしょう。そういう文章は見つかりませんでした。ですのでこれは一つの説によるのではなく,インフレ目標を定めてインフレに誘導したときに首尾よく止められるのかが自分でも疑問であるしそういうことも聞こえてくる,ということではないかと思います。

結局のところ小林氏の問題意識はハイパーインフレにあるのではなく,インフレによって引き起こされる生活苦への不安にあると思われます。

「恐怖のインフレ体験」(『にっちもさっちも 人生は五十一から』)は,「あの高いインフレを体験していない学者に“それがどういうことを引き起こすのかわかるのか,一般人がどういう生活になるのかわかるのか”」という思いがあるのでしょう。「高いインフレは三度来る」ということではないでしょうか。

(余談:小林氏は戦後すぐについては“ハイパーインフレ”という言葉を使っていますが,石油ショックによるインフレについては使っていません。使い分けていると思われます。)

脱線)田中康夫氏(『アクセス』)経由でということも考えて『ニッポン解散 続・憂国呆談』を読んでいたら,浅田彰氏の以下の言葉がありました。

浅田 (略)景気対策無しの構造改革は無茶だし,景気対策を金融政策だけでやるのは無理。日銀がどんどん国債でも買って日銀券をばらまけばインフレに誘導できるとしても,それで本当に実体経済が良くなるのか。またインフレを一定限度で止められる保証はあるのか。

竹中バッシングは是か非か(P.18),(『ニッポン解散 続・憂国呆談』,田中 康夫・浅田 彰,ダイヤモンド社)

参考/引用:

自営業の不安

自由業者(=自営業者)の不安について語りたいと思う。

(略)

こういう仕事は、自分の子供には絶対にやらせたくない。不安に苛まれるだけでなく、病気にもなれない。

できれば避けたい不安の連続(P.32)(『定年なし、打つ手なし』,小林 信彦,朝日新聞社)

インフレ体験と恐怖感

<時代の風>とか<空気>というものがある。

忘れている人もあるだろうが、六十五以上の人は、敗戦直後のあおのハイパーインフレの恐怖が身にしみているはずだ。NHKのアナがよく「セピア色の過去」という言葉を使うが、ぼくにとっては、きわめて生々しい過去である。

それは忘れたとしても、1974年(昭和49年)の狂乱物価、消費者物価24.5パーセント上昇は覚えているだろう。ある出版社の社長が顔を蒼白にしていた。紙が値上がりしたからではなく、地上から消えてしまったからだ。

いま、ぼくがひしひしと感じているのは、そういう不安である。ぼく以外の高齢者もそれを感じているはずだ。胸をしめつける<空気>とは、これである。

四十代の人には、これが伝わらない。物価は安定、自分はいつまでも元気で、いまと同じに働けると信じているからだ。五十五か六十にならないと、肉体の不安は頭をもたげない。ましてや、高齢者の不安は想像できない。かつてのぼくがそうであったように。

高齢者はなぜお金を使わないか?(P.194)(『花と爆弾 人生は五十一から』(小林 信彦,文藝春秋),初出:2003/10/02

1973年に石油ショックがあり、1974年には消費者物価が24.5パーセントも上昇した。まちがいなくインフレである。

ぼくは蒼くなった。ハイパーインフレの怖さを少年時代に体験しているからだ。二人目の子供が生まれたばかりだったし、物価が約25パーセント上がってはたまったものではない。原稿料の収入など、右から左に消えるばかりが、目減りするのだ。

それまで、ぼくは自作の文庫化など、本気で考えたことがなかった。かなり〈怪しくなった〉にしろ、文庫=古典と、ぼくは信じていたからだ。

しかし、もう、生活が成り立たない。

(略)

親切な友人のおかげで、七冊は文庫に入ることになり、1974年の晩秋に世に出た。こまかいことは省略するが、これで、ぼくは〈戦後初のマイナス成長期〉を切り抜けた。

〈うつ病状態〉の中で(P.44)(『定年なし、打つ手なし』(小林 信彦,朝日新聞社)

マスコミについて

小泉の年金未加入問題をしつこく追及した「週刊ポスト」、「週刊新潮」、「週刊文春」や日刊ゲンダイを読んでいないと、なにがどうなっているのか、少しもわからない。例外はあるとして、大新聞とテレビ局が、すべて、政府側に立っている資本主義国なんて、他にあるのだろうか?

まくらが長くなったが、ラジオが力を発揮するのは、ここである。

(略)

午前中はきいていないのだが、三時半の「荒川強啓デイ・キャッチ!」から野球をはさんで十時の「アクセス」につながる流れが強い。

(略)

TBSの強さの中心は、実はソフト<天下国家>なのである。(略)。いや、日曜午後の四時間番組「伊集院光 日曜日の秘密基地」も、あちこちに辛口のニュースがある。

本音のラジオと不安心理(P.119)(『本音を申せば』(小林 信彦,文藝春秋),初出:2004/06/10)

ここに、宮崎哲弥、二木啓孝両氏がゲストで出て、まあ、TBSのバトルトーク番組「アクセス」チームのレギュラーの人たちですね。

(略)

番組には、田中長野県知事、さらに、宮台真司、金子勝の両氏も加わるというので、これはもう、オールスターなのですね。「アクセス」リスナーにとっては。

選挙の一日(P.235)(『花と爆弾 人生は五十一から』(小林 信彦,文藝春秋),初出:2003/11/27)

“黒歴史”? イーホムズ社の偽装事件発覚の経緯2006/01/10 21:06

セキュリティホールメモ経由。イーホームズ社が“偽装事件の発覚からの経緯一覧表”を発表しました。

偽装事件の発覚からの経緯一覧表 (実際の一覧表はここからリンクされている“偽装事件発覚の経緯.pdf”というPDFファイルにあります)。

よって、弊社は、まず第一に、構造計算プログラムが編集改ざんされないシステムの開発を実現します

偽装事件の発覚からの経緯一覧表

何かわからないものを持ってこられて精査するのは大変だから先に抑えて仕事量を減らすということでしょうか。プログラムの改竄を防ぐということではASP型でしょうね。

電子透かしのような偽造されかねないものになりそうな感じもありあり。とりあえず(プログラムでなく)改ざんされないシステムをお願いします。

紙は簡単に改竄できますから、改竄されないシステムは電子申請ということになるでしょう。これは積極的に働きかけてもらいたいと思います。

■追記

経緯はしっかり読んでいないのでそのうち追記するかも(しないかも)。

いわゆる耐震強度偽装問題についてのメモ2006/01/09 23:32

メモ

今回のいわゆる耐震強度偽装問題で考えていたのは,建築主の善意を期待するのは不可能なのだから,検査機関で監査できなければ駄目なんじゃないのかなぁということでした。

ですので“専門家なら簡単に見抜ける”という偽装だったのか(検査の怠慢),“専門家でも見抜けない偽装”(制度の不備)だったのかが大きな疑問です。

ついでに、検査機関の検査をいうものがどれくらいのもの(やることと分量)をこなさなければいけないのかも知りたいところです

なんで,ここが報道されないかなぁと思っていたところ,作家の日垣隆さんがメールマガジン(有料)にて,構造計算ソフトを操作した旨のレポートを書いていらっしゃいました。

いくら新聞や雑誌を読んでもテレビを見ても、姉歯(元)建築士が実行した偽装とは、いったいどれほど巧妙なものだったのか、私にはわかりませんでした。

~略~

偽装の実際に関する疑問を解くために私は先日、構造計算を専門とする一級建築士の事務所を訪ね、問題のSS2(正確にはSuper Build SS2)というソフトを自分で操作してみる(させてもらう)ことにしました。

構造計算の偽装は単純だったのか、巧妙だったのか(日垣隆,今週のコメント[ガッキィファイター])
http://homepage2.nifty.com/higakitakashi/comment/comment36.html

で,実際に操作しての結論が以下のことです。

いいえ。こんなことに慣れなくても、要するにSS2ソフトの「耐震強度」という項目に、例えば千葉県内の13階建てマンションなら「1.0」とか「1.05」とかの数値を入れればいいだけです。

そこに姉歯は、何と「0.6」とか「0.25」とか「0.15」を入れていただけなのでした。それが偽装工作の総て、だったのです。

~略~

実際に演算の仕方を教えてもらうと、5秒もかからず結果が出てきました。

つまりイーホームズは、素人でも5秒でできるチェックをしていなかった、ということになります。

構造計算ソフトを私が走らせてみて、わかったこと(日垣隆,今週のコメント[ガッキィファイター])
http://homepage2.nifty.com/higakitakashi/comment/comment37.html

耐震強度の最低が1ならば1より小さい数字は必要ないわけですから、入れられないようにしておくべきなのではないかなあ。勿論1より大きいものを1にするのは防げませんが。ちょっと思いつきですが、地名を入れると耐震強度のデータを引っ張ってくるというのでもいけるのではないでしょうか。

まあ、それでも経路上での差し替えは可能だし、そもそもローカルなソフトはどうやっても改竄が可能になります。

ですので、崎山伸夫さんの書いておられる,ASP型(外部サーバに計算させる)は良いのではーと思います。

崎山伸夫のBlog - 構造計算ASPというのはどうだろうか?
http://blog.sakichan.org/ja/index.php/2005/12/31/how_about_structural_calc_asp

ここでのコメント欄にて,ASP型が実際にあるということ、並びに結局紙で出さんければいけないのを何とかしなければという指摘は大変参考になります。

ちょっと関係ないこと

検査ではないですが,被害額が大きすぎて責任を取るべきところが取りきれないというのは大きな問題だなぁと思います。責任を取らされることによって違反を犯さないような動機付けを与えることがここでは出来なくなっているわけですから。結局は身体の拘束のような罰則の強化しかないのかなぁ。