世界を大いに盛り上げているらしい涼宮ハルヒの団 ― 2006/05/21 23:48
4月から「涼宮ハルヒの憂鬱」のアニメ版が始まりました。
日本でも書店によっては新刊が売り切れるなどの人気になっているようですが,海外でも既に盛り上がっているようです。
Wikipediaでも既に項目が出来ております。
The Melancholy of Haruhi Suzumiya - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Melancholy_of_Haruhi_Suzumiya
Google Trendsで"haruhi"の結果
http://www.google.com/trends?q=haruhi&ctab=0&geo=all&date=2006-4
YueTubeでも311登録があります。
http://www.youtube.com/results?search=suzumiya
オリジナルそのままのもの以外ではエンディングが人気のようです
ガンダムとか文字とか赤木バージョンなど色々あります。
一番有名なのははめ込みをつかったりして一人でやった
http://www.youtube.com/watch?v=FSpwiGFyvo8
でしょう。
ファンサイトの
SOS団<
http://sos-dan.com/
はそれのavi版があります。
また,エンディングのダンスの解説や振り付けを覚える用の動画ファイル(鏡映しにしてそのままマネればいいようになっている)などもあります。
ドイツのファンサイトもあります。
SOS Dan (Sekai wo ooini moriageru tame no Suzumiya Haruhi no dan)
http://www.milchclan.com/haruhi/enter.html
原作は落ち着いたSFでそれぞれの話で趣向が凝らされております。 アニメもそれを踏襲して落ち着いているのが面白いのですが,1話など原作ファン以外は置いてけぼりであり,ここまでの人気になっているのが不思議です。
原作でも比重が増している長門さんが人気のようです(綾波萌えの人は被りそう)。
小林信彦「昭和のまぼろし」(文藝春秋社) ― 2006/05/06 22:33
週刊文春連載の「本音を申せば」の2005年掲載部分をまとめたものです。
今回はインフレ関連はなし。今回は昭和の忘れられた(or現在ではわからなくなった)部分がやや多目の印象があります。
勿論,映画・テレビ・ラジオなどの娯楽ネタも満載です。
成瀬ファンには
- 『成瀬巳喜男・生誕100年』
- 『成瀬ワールドへの招待1』
- 『成瀬ワールドへの招待2』
などが興味深いでしょう(これ以外にちょこちょこあったりします)。
『迎え火、送り火』(P.157)では、名前が出てこなくなったという文章に引き続いて
そのくせ、海外の女優から日本の十代のアイドルまで、女性の名前は、すっと出てくるのだ。
とあります。。
“十代のアイドルまで”という範囲が名前を知っているというレベルではないのは,この本でも
『「タッチ」で観る長澤まさみ』(P.212)
や
『笹川美和のオールナイトニッポン』(P.51)
などに表れています。
この『「タッチ」で観る長澤まさみ』は映画への見識とスター(アイドル)への見識をもった小林氏にしか書けない文章です(小泉今日子主演の「生徒諸君」についての文章を髣髴させます。)。
じゃ、なぜ「タッチ」を観たのかといえば、長澤まさみのスター性ですね。
先日、成瀬巳喜男監督の昭和二十年代の映画を観ていたら、<まだ新人>というピカピカな感じで十代の香川京子さんが出てきた。
あっ、と思うほど、長澤まさみに似ていた。
この他「タッチ」は往年のファンがうるさいという部分(まんまオタクの問題点です)の言われて困る
状況の説明が見事です。
これらの他,『二十七年目の「スターウォーズ」』(P.142~)も面白いです。
>ルーカスはオリジナリティにこだわらず
といういただきの部分,陽気さの理由、シリーズを九部作ることが出来なかった理由の推測などスターウォーズファンの評論家からは出てこない鋭い意見が多くあります。
この本はバラエティ豊かで“まるごと小林信彦”という趣であり,今まで読んだことのない人への入門としても,最近読んでいなかったという人にも最適と思われます。
「貸本マンガReturns」は面白い ― 2006/03/21 22:58
「貸本マンガReturns」(貸本マンガ史研究会,ポプラ社)は貸本マンガについての研究書(入門書)です。
貸本マンガについて,ジャンルごとに作家・作品を紹介しながら社会からの影響・読者層,どのように消費されたかなどを交えて貸本マンガの世界を描いています。
時代劇,探偵・アクションもの,少女マンガ,怪奇マンガ,青春マンガについて紹介していますが,あとがきによると,戦記,ユーモアなど取り上げられなかったものもまだあるとのこと。
作品紹介の羅列ではなく,貸本世界(業界・読者・作家)の関係についてかなりの比重で書かれているのが,大変面白いところであり,マンガの多様性の生み出され方を考える上で参考になるところです。
(主には序章の「貸本マンガの豊かな世界―戦後の貸本業界と貸本マンガ」に書かれていますが,それぞれのジャンル内でも折に触れ登場します)。
章ごとにコラムがありこれも
- 出版社による「サービス」の実態
- 貸本マンガの「読者のページ」
- マンガ家と読者を結ぶもの
- 貸本マンガの流通過程
など興味深いものが多い。
また,巻末に資料として
- 貸本マンガ関係年表
- 貸本マンガ家リスト1000+α
- 主要貸本マンガ出版社リスト
もあります。
特に,社会の出来事・通常のマンガ界の出来事と並列して記述されている貸本マンガ関係年表はその時代を肌で知らないものにとっては,状況を確認する上で大変参考になります。
個別に面白かったところいくつか。
- 編集者が存在しなかったのでかなり作家の自由であった
- 作家による読者像の意識
- 講談の影響
- 紙芝居作家の流入
- 少女ものの貸本マンガの世界(女性の読者は決して少ないわけではなかった)
- 質と人気は必ずしも一致しない
週刊誌がマンガを借りるものから買うものへと変えた(P.30)
貸本マンガが壊滅に向かうのと歩調を合わせるように,マンガブームが起こる。(P.31)
大変に面白い本ですが,主観的な色合いの強い部分(含むイデオロギー的部分)もありそこいら辺は割り引いて読む必要があるでしょう。
『日本型ヒーローが世界を救う!』 でまたちょっと考えたこと ― 2006/03/16 01:31
増田悦佐『日本型ヒーローが世界を救う!』 に関連して,田中先生のドラフトでまたちょっと考えた。
(田中先生のドラフト:書評再掲:『日本型ヒーローが世界を救う』の草稿として公開されていたものです。)
1.アメリカでは規制が厳しくて発達しなかったのか?
北米でもポケモンや遊戯王のヒットで子供を主人公にしたアニメが流行ることが発見された。
日本では手塚治虫により,マンガの可能性が見出され公知のものとなった。
アメリカではその発見がなかっただけではないのか?ついでに,アメリカの子供はマンガの代わりに何にお金を使ったのだろうか?
(どの産業を発達させたのだろうか)
2.アニメも自由競争の産物?
宮崎駿氏が手塚氏に対する追悼原稿で,手塚治虫がダンピングしなければアニメには別のあり方があったのではないかという趣旨のことを述べました。
マンガと同様にこれも(安売りのおかげで)自由競争で今日の隆盛があると考えられるのではないか。
別のあり方は,上質ではあるかもしれないが刺激的ではないかもしれない(ある種のアメコミのように)。
またはフランスのBDのように芸術性は高いが一般受けはしないかもしれない
3.集団
セーラームーンにしろ,ドラゴンボールにしろ明確に主人公は定まっており,物語の幅を広げる為に他のキャラはいる。
見る人を増やす為にも効果があるのではないか(色々なキャラがいると趣味に引っかかる要素が増える)。
手塚治虫はキャラよりも物語優先ではないか。
セーラームーンの物語構造は少年マンガの対決ものと同じである。少女にも受容する余地があることはセーラームーンによって発見されたのではないか。
4.ついでに思い出したこと
イギリスの少女マンガ
ナナオの症候郡(2)P.127(速星 七生,サンコミックス,1984年刊)
- 32ページに連載10本
- その中の7本は主人公の少女が苦労するお涙ちょうだいもの。
アメリカの日本ファンマガジン
新宿のゲーム屋(シミュレーションゲームやRPGを扱っているところ)で昔買った雑誌
アニメが中心だけれどもそれ以外の日本文化も紹介していた。
で,ドラマの紹介などもあって,その中になんと「サラリーマン金太郎」があった!
“Japanese business man”の物語とあったが,なんか違うとおもってしまうw。
発見
模倣と考えるより,ある物事が発見されそれが共有される,と考える方がしっくりくるのではないだろうか。
萌えって特徴の発見ではないかとちょっと思ったり
大塚英志への無関心
無茶すぎて批判するほどのことかね,と思ってしまう。
愛の経済学者 韓リフさんにお勧めする小林信彦の小説~「オヨヨ」と「イーストサイド。リバー」を柱に~ ― 2006/02/25 03:23
ほとんどが新刊での入手が不可能になっていますが,古本での入手は可能なものばかりですので分けませんでした。
結局,中期以降をほとんどいれた形になってしまいました。
基礎系
オヨヨにギャグでつながるものとして唐獅子シリーズは抑えておきたいところです。
オヨヨや唐獅子のような“喜劇的想像力”のものとしては,短編集の
- 「笑いごとじゃない―ユーモア傑作選」(文春文庫)(単行本「発語訓練」+α) 。
ソ連に日本が占領された世界を描く「サモワール・メモワール」がおかしくて悪夢的です。
おそらく氏も紹介していた「笑いごとじゃない―世にも明るい闘病記」(ジョーセフ ヘラー,ちくま文庫)から題名をとったと思われます。
集大成の長編として,また現代史もののさきがけとしては「僕たちの好きな戦争」があります。
- 「僕たちの好きな戦争」
喜劇的想像力の集大成。あの戦争を勝っているときには,みんなどう楽しんでいたかが描かれます。位置づけは筒井康隆氏における「虚構船団」。
ラノベ的なもの
オヨヨのライトノベル的側面の発展系ともいえる小説。
ラノベに近いもの
- 「イエスタディ・ワンスモア」
本人の言うとおりキュートな小説。高校生の夏休みの読書にふさわしい本。
男子高校生が1959年にタイムスリップする,時代的逃亡者の小説。主人公は若いのに老けた考え方をしています。
あとがきより抜粋
この小説の中に出てくる,戦前に建てられた川岸のアパートメントは創作であるが,モデルは存在する。両国橋を本所の方へ渡ってすぐ左側にある煤けたアパートメントである。(「流れる」という1965年の映画では,このアパートメントは光り輝いている。高峰秀子が川岸を歩く唯一のシーンで遠くに見えるのだ。
- 「ミート・ザ・ビートルズ」
「イエスタディ・ワンスモア」の続編。舞台はビートルズ来日の1966年。
かなりの資料を集め,また,
キャピタル東急に泊って,エレベーター関係その他を調べ上げた
ということもやっています。当時,パンフレットを元に間違っていると指摘したマニアと実際に見たんだという小林氏で論争がありました(確か)。
- 「極東セレナーデ」
朝日新聞の夕刊に連載(1987年)。広告業界と原発の話。
広告代理店の切れ者が経済効率よくフツーの女の子をアイドルに仕立て上げる
話。バブルに突入する前のアノ時代がよく出ています。
ライトノベル的部分から「イースト~」などにつながっていくもの
- 「ハートブレイク・キッズ」
公明新聞連載(1988年)
若い女性が佃島のリバーサイドにある人気作家の高級マンションの留守番を頼まれ,事件に巻き込まれる。
作者も余裕を持って書いている軽めの小説。
単行本の帯のキャッチフレーズは“現代のTokyoに住む私たちのコミカルでロマンティックな毎日”。かなり嘘だと思います(笑)。
やはりというか下町に詳しい男(若い)が登場します。
青春小説
- 「世間知らず」(文庫では「背中あわせのハート・ブレイク 」)
著者いわく
最初で最後の青春小説
。舞台は朝鮮戦争勃発前後の1949-1950年。16歳の高校生と親戚の混血の少女との恋愛が時代を絡めて描かれます。今となっては米軍占領下の日本はほとんど異世界です。かなり,せつない小説。
「イーストサイド・ワルツ」につながっていく大人向けのもの
- 「世界で一番熱い島」
南海の小国での陰謀と熱愛の物語
。グレアム・グリーン的。様々な陰謀や欲望がうずまく。「 イーストサイド・ワルツ」や「ムーン・リヴァーの向こう側 」が精神的逃亡者であるのに対して,肉体的逃亡者。
ある島国でホテルマネージャーをやっている日本人が主人公。トルソ(胴)に対するフェティシズムの持ち主。
微妙な関係しかない時代物
- 裏表忠臣蔵
ご乱心により不条理な世界に突き落とされ時代に翻弄された人々(吉良と浅野家の家臣)を黒い笑いで描く。
そこには悪い吉良と正義の義士という観点はなく,立派な心がけも登場せず,人は己の損得に従って行動し悲劇へと突入する。
都会に対する田舎モノの複雑な心理とそれに気付かない都会のモノというモチーフも見え隠れする。
まとめ
少年的な部分では「イエスタディ・ワンスモア」と「世間知らず」大人的な部分では
番外その1
小説ではないですが補助教材として小説論を
- 「面白い小説を見つけるために」(知恵の森文庫)。単行本は「小説世界のロビンソン」
著者いわく
小説を論じるときには、この程度のことはわきまえておいて貰いたい
最低限度の常識
を書いたもの。SFと推理小説の想像力の違いについ述べた『早すぎた傑作「火星人ゴーホーム」』,フラット・キャラクターとラウンド・キャラクターについて述べた『「我輩は猫である」とフラット・キャラクター』など面白いです。
番外その2
新潮オンデマンドブックスにて10点復刻されていますが,値段が高い!
新潮オンデマンドブックス:http://www.shosai.ne.jp/shincho/old_writer.html
- 怪物がめざめる夜:2625円
- 神野推理氏の華麗な冒険:3150円
- 紳士同盟:4305円
- 紳士同盟ふたたび:3990円
- 素晴らしい日本野球:2520円
- 世界でいちばん熱い島:3465円
- 世界の喜劇人:3255円
- ビートルズの優しい夜:2625円
- 夢の砦(上):5775円
- 夢の砦(下):5775円
紳士同盟はコン・ゲームの小説。「素晴らしい日本野球」は「発語訓練」の改題で“喜劇的想像力”が爆発した短編小説集。どちらも気軽に読むタイプの小説なのにこの値段は・・・Orz
完全なる番外
- 「フルーツ・バスケット」(高屋奈月,白泉社)
小林信彦ではないのですが^^;。その上少女マンガですが…。現代のマンガの豊潤さをあらわしています。後の方の巻になって最初の頃に伏線が張られていたことに気付かされたり,暗い話のあとにギャグを織り交ぜ,暗いままにしないなど,絵の達者でない加減と裏腹の構成の巧みさがあります。
「冬ソナの経済学」を読み返してみて,利己的と利他的が入れ子になっているようなこのマンガが合うのではないかと思い推薦させていただいた次第です。
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